以前、弁護士から外国人の部屋の明け渡し訴訟は非常にむつかしいと聞いたことがありますが、それは、本当でしょうか?
今は、すべての新規契約には大手保証会社による『家賃保証会社』に加入しているのでいわゆる『夜逃げ』のリスクもカバーできているはずですが、基本的な考え方を理解しておきたいので文章にまとめてみます。
基本的に賃貸借契約のような継続的な契約は3か月程度の家賃滞納(債務不履行)があれば、信頼関係の破断があったものとして、契約の解除が認められることが多いです。
ただし、実際に信頼関係が破断したかの認定及び部屋を強制的に明け渡すかどうかの判断は裁判所が決めることであって、大家が勝手に部屋の荷物を処分してしまうと、窃盗と言われてしまう可能性もあるのでご注意くだい。
次に、いわゆる『夜逃げ』ですが、家賃滞納者が確信犯的にいなくなってしまうことも、まれですが、あります。この場合、裁判で明け渡し訴訟をするにしても、借主が逃げてしまっているので訴状を本人に届けることができません。そこで利用するのが『公示送達』制度です。
公示送達とは簡単に言うと、裁判を起こしたい相手方が行方不明の場合は、裁判所の前の掲示板などに、文章(訴状は裁判所で預かっていますよ。というような内容)を掲示することによって、相手方に伝わったものとみなしてくれる制度です。
これには、現地調査と2週間の掲示が必要なので、手間と時間がかかります。
ここまでは賃貸業界では常識的な話で、私も知っていたのですが、その弁護士が言うには相手が外国人の場合は、この『公示送達』がむつかしいというのです。
国外転出者に対しての公示送達は難しいのか?
まず、外国人が住民票を作成することになるケースですが、観光などの短期滞在者等を除き、在留期間が3月を超えて滞在する外国人は住民票を作成することになるので、家を借りていた外国人は住民票があることが前提です。また、外国人の賃貸の契約時には基本的に『在留カード』が必要です。
今回は、外国人契約者が家を放り出して自国へ帰ってしまった場合を想定します。
すこし、しらべてみると・・・確かにめちゃややこしい。
①借主の住民票(除票)を取得して転居先が海外になっていることを確認する。
②次は入国管理局の出入国履歴を調べます。
ここから先は調べてもわかりませんでした。この情報化社会にインターネットで調べても出てこないというのは、かなり難しい作業なんでしょう。
ここまで、手続きがややこしいとなると、裁判は当然プロに頼むことになりそうですが、費用も時間も通常バージョンよりたくさんかかりそうなので、家賃保証会社に入っていない場合は『えいやっ』と自力救済してしまいたくなる気持ちもわからなくありません。
実際のところ、大手の家賃保証会社でも入居者が夜逃げした場合(通常パターンも含む)は、表現こそは直接的ではありませんが、発言を要約すると『自力救済で勘弁してくださいよ。もう帰ってきませんよ。』と言ってくることも多いです。(昔に比べて減りましたが・・)
場合によっては、契約条文を無理やり解釈してきて保証を打ち切られてしまう可能性もゼロではありませんので、警戒しながら対処しないといけません。
ところで、外国人であることを理由に家主が契約を断ることは人権問題としてダメだということは、なんとなく理解していますが、外国人に夜逃げされると契約解除の手間が非常にめんどくさいことになるのであれば、永住者は除いてお断りしたくなる気持ちもわかります。
この点について、私は、今までは事務的に『当方は外国語が苦手なので日本語ができない人は入居されても対応できません』という答えを判断ラインとしており、特に問題なく運営できていましたが、これからの国際化の波に対応するために、日本語が不慣れな外国人に対しては、初回は1年間未満の定期建物賃貸借契約で契約をして『とりあえず1年間様子を見る』という作戦も検討しないといけない時代かもしれません。
おわり